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医療費控除の始め方ガイド|対象になる費用・計算方法・確定申告での申請手順を解説

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※ 2026年7月時点の情報です

「1年間で医療費が思ったよりかかったけれど、医療費控除って自分にも使えるのだろうか」「セルフメディケーション税制と医療費控除、どっちを選べばいいのか分からない」。医療費控除は、その年に支払った医療費が一定額を超えた場合に、超えた分を所得から差し引ける制度です。会社員でも自分で確定申告をすることで、所得税の一部が還付されたり翌年の住民税が軽減されたりします。

この記事では、医療費控除の仕組み・対象になる費用・計算方法・確定申告での申請手順を、国税庁の公表資料をもとに整理します。セルフメディケーション税制との使い分けにも触れます。

1. 医療費控除とは?

医療費控除は、その年の1月1日から12月31日までに、本人または生計を一にする配偶者やその他の親族のために支払った医療費が一定額を超えた場合に、超過分を所得から差し引ける所得控除の制度です。

ポイントは次の3つです。

  • 自分と家族の医療費をまとめられる:本人だけでなく、生計を一にする家族の分も合算できる
  • 実際に支払った金額が対象:その年の1月1日から12月31日までに実際に支払った医療費が対象。未払いの分は翌年以降に持ち越し
  • 確定申告が必要:年末調整では手続きできず、自分で確定申告書に医療費控除の明細書を添付して申請する

医療費控除には別枠で「セルフメディケーション税制」という特例があり、市販薬(特定一般用医薬品等)の購入費だけを対象にした簡易版の制度も選べます。ただし両方を同時には使えず、どちらか一方を選択して適用します。詳しくはセクション4: セルフメディケーション税制との使い分けで整理します。

2. 対象になる医療費・対象にならない医療費

医療費控除の対象になるかどうかは、支払いの目的が「治療のためか、それとも予防・健康増進のためか」で線引きされます。

対象になる医療費

国税庁が対象例として挙げているものには、次のような費用があります。

  • 診療・治療費:医師または歯科医師による診療・治療の対価
  • 治療または療養に必要な医薬品の購入費:風邪をひいた場合の風邪薬など、治療目的の市販薬も含む
  • 入院に伴う費用:病院・診療所に収容されるための人的役務の提供の対価、部屋代・食事代
  • 施術費:あん摩マッサージ指圧師・はり師・きゅう師・柔道整復師による施術(治療目的に限る)
  • 療養上の世話:保健師・看護師・准看護師などによる療養上の世話の対価
  • 助産師による分べんの介助料
  • 通院費:公共交通機関を利用した通院の交通費(原則)
  • 医療用器具の購入・賃借料:義手・義足・松葉杖・補聴器・義歯・眼鏡(治療のために医師の指示で購入したもの)

対象にならない医療費

一方、次のような支出は医療費控除の対象になりません

  • 健康診断・人間ドックの費用(原則。ただし重大な疾病が発見されて引き続き治療を受けた場合は治療の一環として対象)
  • 予防・健康増進のためのビタミン剤や漢方薬
  • 疲労回復・体調を整える目的のマッサージ・はり治療
  • 医師などに対する謝礼金
  • 家族・親族に支払う付添料
  • 自家用車で通院した場合のガソリン代・駐車場代
  • 公共交通機関が使える場合のタクシー代

「治療目的か・予防目的か」で対象が分かれるため、たとえば同じビタミン剤でも医師が治療のために処方したものは対象、健康維持のためにドラッグストアで買ったものは対象外となります。

3. 控除額の計算方法

医療費控除の控除額は、次の式で計算します。

医療費控除額 =(実際に支払った医療費の合計額 − 保険金などで補てんされた金額)−(10万円 または 総所得金額等の5%のいずれか少ない額)

控除額の上限は200万円です。

差し引く「保険金などで補てんされた金額」

医療費のうち、次のような給付金・保険金で補てんされた分は差し引きます。

  • 生命保険や損害保険から受け取った入院費給付金・手術給付金
  • 健康保険から支給された高額療養費・家族療養費・出産育児一時金

たとえば入院で30万円を支払い、加入していた医療保険から入院費給付金20万円を受け取った場合、医療費控除の計算に使える医療費は「30万円 − 20万円 = 10万円」になります。給付金は「その給付の目的となった医療費を限度として差し引く」ため、給付金が対象医療費を上回った場合でも、他の医療費から追加で差し引く必要はありません。

「10万円 または 総所得金額等の5%」の意味

差し引く金額は原則として10万円ですが、その年の総所得金額等が200万円未満の方は、10万円ではなく総所得金額等の5%を差し引くことになります。

  • 総所得金額等が200万円以上の方:一律 10万円を差し引く
  • 総所得金額等が200万円未満の方:総所得金額等 × 5%を差し引く(10万円よりも少ない金額になる)

たとえば総所得金額等が150万円の方なら、差し引く金額は「150万円 × 5% = 75,000円」となり、7万5,000円を超える医療費が控除対象になります。所得が低い方ほど、少ない医療費でも控除が受けやすい設計です。

具体的な計算例

会社員(総所得金額等300万円)が、家族全員でその年に25万円の医療費を支払い、保険金の補てんが5万円あった場合を考えます。

  • 実際の医療費:25万円 − 保険金5万円 = 20万円
  • 差し引く金額:総所得金額等が200万円以上なので10万円
  • 医療費控除額:20万円 − 10万円 = 10万円

この10万円が所得から差し引かれ、所得税率が10%の方(課税所得195万円超330万円以下)なら約10,000円(10万円 × 10%)の所得税が軽減されます。翌年の住民税(標準税率は所得割10%=道府県民税4%+市町村民税6%)も、控除額10万円に対して10%の1万円が軽減される計算です。

4. セルフメディケーション税制との使い分け

セルフメディケーション税制は、医療費控除の特例として設けられた制度です。対象は「特定一般用医薬品等(スイッチOTC医薬品等)」の購入費で、通常の医療費控除より少ない金額から控除が受けられます。

セルフメディケーション税制の概要

対象になるスイッチOTC医薬品は、日本一般用医薬品連合会が定める共通識別マークがパッケージ上に表示されているほか、厚生労働省のホームページで対象品目一覧が公開されています。

通常の医療費控除との違い

セルフメディケーション税制と通常の医療費控除は、どちらか一方だけを選択して確定申告します。両方を組み合わせて使うことはできず、一度確定申告書を提出したあとで、更正の請求や修正申告によって選択を変更することもできません

どちらを選ぶかの目安は次のとおりです。

  • 年間の医療費(家族合算)が10万円を超えている:通常の医療費控除のほうが控除額が大きくなりやすい
  • 年間の医療費は10万円未満だが、スイッチOTC医薬品の購入が年12,000円を超えている:セルフメディケーション税制のほうが控除を受けられる可能性がある

たとえば会社員でスイッチOTC医薬品を年間3万円分購入した方は、セルフメディケーション税制なら「3万円 − 12,000円 = 18,000円」の控除が受けられます。通常の医療費控除では医療費合計が10万円に届かず控除ゼロになるため、この場合はセルフメディケーション税制を選ぶメリットがあります。

なお、令和8年3月31日に成立・公布された「所得税法等の一部を改正する法律」(令和8年法律第12号)により、セルフメディケーション税制について次の見直しが行われました。財務省の令和8年度税制改正の解説によると、本特例のうちスイッチOTC医薬品の購入の対価に係る部分は適用期限を撤廃それ以外の医薬品の購入の対価に係る部分は適用期限を5年延長となります。あわせて対象医薬品の範囲について、消化器官用薬・一定の生薬を有効成分とする鎮咳去痰薬・体外診断用医薬品・薬局製造販売医薬品を追加し、痩身・美容目的の医薬品を除外する見直しも行われ、対象医薬品の範囲見直しは令和9年分以後の所得税から適用されます。

5. 確定申告での申請ステップ

医療費控除は年末調整では手続きできず、自分で確定申告をする必要があります。会社員でも、医療費控除だけのために確定申告することが可能です。

① 1年間の医療費を集計する

まず、その年(1月1日〜12月31日)に本人と生計を一にする家族が支払った医療費の領収書を集めます。

領収書が多い場合は、国税庁が用意する「医療費集計フォーム」(Excel形式)で入力・集計すると、確定申告書等作成コーナーに読み込ませて明細書に反映できます。

② 医療費控除の明細書を作成する

確定申告書に「医療費控除の明細書」を添付する必要があります。明細書には医療を受けた人・病院や薬局の名称・支払った医療費・保険金などで補てんされた金額を記載します。

健康保険組合等から交付された「医療費通知(医療費のお知らせ)」を添付する場合は、通知に記載された医療費の合計額の記入で明細書の記載を省略できます。マイナンバーカードでマイナポータルとe-Taxを連携させておくと、確定申告書等作成コーナーで医療費通知情報を取得して申告書の該当項目に自動入力できるため、明細書への1件ずつの転記が不要になります。

③ 確定申告書を作成・提出する

国税庁の確定申告書等作成コーナーで、医療費控除の情報を入力し、e-Taxでの送信または書面での提出を選びます。会社員の場合は勤務先から受け取った源泉徴収票の内容もあわせて入力します。

確定申告の期間は原則として、その年の翌年2月16日から3月15日までです(土日祝の関係で前後することがあります)。還付申告のみの場合は、翌年1月1日から5年間、いつでも提出できます。

④ 領収書は自宅で5年間保管する

医療費の領収書は確定申告時の提出・提示は不要ですが、確定申告期限等から5年間、税務署から提示や提出を求められる場合があるため自宅で保管する必要があります。医療費通知を添付して省略した部分の医療費についても、領収書の保管は必要です。

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6. 申請前に押さえておきたい3つの注意点

① 家族の医療費もまとめて申告する

医療費控除は、本人だけでなく生計を一にする配偶者・子・親などの分もまとめて合算できます。所得控除は所得税率が高いほど税額の軽減効果が大きくなる仕組みのため、共働き夫婦なら所得税率の高いほうがまとめて申告すると控除の効果を最大化できます。

「生計を一にする」は同居している必要はなく、たとえば別居の親に仕送りをして生活費を送っている場合も、その親の医療費を合算できるケースがあります。ただし共働きで別家計の場合など、生計を一にしていないと判断される場合は合算できません。

② 医療費通知だけに頼らず領収書も残しておく

健康保険組合や協会けんぽから届く「医療費通知」を活用すると明細書の記載を省略できて便利ですが、通知は前年分の一部の月しか含まれないケースや、通知の交付時期が確定申告に間に合わないケースもあります。

普段から領収書を月ごとの封筒などに分けて保管しておくと、通知に載っていない支払い(自費診療・薬局・通院交通費など)もあわせて漏れなく申告できます。

③ 通院交通費・市販薬の扱いをきちんと分ける

通院にかかった公共交通機関の交通費は医療費控除の対象ですが、自家用車のガソリン代・駐車場代は対象外です。市販薬は「治療目的」であれば対象、「予防・健康増進目的」なら対象外という区別があります。

セルフメディケーション税制を選ぶ場合は、対象になるスイッチOTC医薬品の領収書だけを集計する必要があるため、購入時に共通識別マーク付きの領収書をもらっておくと集計が楽になります。

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ドラッグストアや薬局での支払いを、その場でポイント還元率が高くなる決済に切り替えると、セルフメディケーション税制の対象額はそのままに実質負担を下げられます。日常買い物のカード選びはこちらを参考にしてください。

コンビニ・飲食チェーン・スーパーでポイントを最大化するカード&決済ガイド

7. よくある質問

会社員でも医療費控除は使えますか?
はい、会社員でも使えます。ただし年末調整では手続きできないため、自分で確定申告書を作成して税務署に提出する必要があります。医療費控除だけのための確定申告も可能で、 国税庁の確定申告書等作成コーナー を使えば画面の案内に沿ってe-Taxで提出できます。還付申告は翌年1月1日から5年間受け付けているため、前年分の医療費控除を忘れていた場合も過去にさかのぼって申告できます。
医療費が10万円を超えないと控除は受けられませんか?
原則として10万円を超える部分が控除対象ですが、 その年の総所得金額等が200万円未満の方は「総所得金額等の5%」を差し引く 扱いになるため、10万円未満でも控除が受けられる場合があります。また医療費が10万円未満でも、スイッチOTC医薬品の購入が年12,000円を超えていればセルフメディケーション税制の対象になる可能性があります。
家族の医療費もまとめて申告できますか?
はい、可能です。 本人または生計を一にする配偶者・その他の親族のために支払った医療費 が対象になるため、家族全員分を合算して申告できます。共働き夫婦の場合、所得税率の高いほうが申告すると控除の効果が大きくなります。別居の親などでも、生活費を仕送りしていて生計を一にしていると判断される場合は合算できます。
領収書は税務署に提出しないといけませんか?
確定申告時の提出は不要ですが、 確定申告期限等から5年間、税務署から提示や提出を求められる場合があるため自宅での保管が必要 です。医療費通知を添付して明細書の記載を省略した部分についても、領収書は保管しておきましょう。
医療費控除を受けると住民税も安くなりますか?
はい、原則として住民税も軽減されます。医療費控除は所得税と住民税の双方に適用される所得控除で、所得税の確定申告をすれば、税務署から市区町村へ申告データが送られるため、住民税のための別途申告は不要です。市区町村側で住民税の控除額で再計算され、翌年6月から始まる住民税に反映されます( 確定申告書等作成コーナーの医療費控除案内 )。 住民税の所得割の標準税率は10%(道府県民税4%+市町村民税6%) のため、控除額 × 10%が翌年6月以降の住民税軽減の目安になります。

8. まとめ

医療費控除は、その年に支払った医療費が一定額を超えた場合に、超過分を所得から差し引ける制度です。会社員でも自分で確定申告することで所得税の還付や翌年の住民税軽減が受けられます。この記事の要点を整理します。

  • 対象:本人と生計を一にする家族の分をまとめて合算できる。治療目的の医療費が対象で、予防・健康増進目的は対象外
  • 控除額:(実際の医療費 − 保険金等での補てん)−(10万円 または 総所得金額等の5%のいずれか少ない額)。上限200万円
  • セルフメディケーション税制:スイッチOTC医薬品の購入費が対象。12,000円超で年88,000円まで。通常の医療費控除とは選択適用
  • 手続き:確定申告書に医療費控除の明細書を添付。マイナポータル連携で医療費通知を自動反映できる。領収書は5年間保管

医療費控除を活用しながら家計の税制優遇枠を広げるには、NISA・iDeCoなど他の所得控除・非課税制度との組み合わせも視野に入れると効果的です。

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