103万円・160万円の壁とは?2025年税制改正で変わる『税金の年収の壁』と特定親族特別控除をわかりやすく解説
※ 2026年6月時点の情報です
「103万円の壁が160万円に上がったって聞いたけど、結局いくらまで働いていいの?」「特定親族特別控除ってよく聞くけど、自分の家には関係ある?」——2025年(令和7年度)の税制改正で税金側の「年収の壁」が大きく動き、ニュースで取り上げられる金額もバラバラで分かりづらくなりました。
この記事では、改正で動いた4つの境目を、「誰の」「何の」境目なのかで分けて給与収入ベースで整理します。先に全体像を示すと次のとおりです。
- 本人の所得税がかかり始める境目:103万円 → 160万円
- 家族の扶養(配偶者控除・扶養控除)に入れる境目:103万円 → 123万円
- 配偶者特別控除の満額(38万円)が受けられる境目:150万円 → 160万円
- 特定親族特別控除の新設:19歳以上23歳未満の親族が給与収入188万円まで働いても、扶養する側が段階的に最高63万円の控除を受けられる
それぞれの中身をセクションごとに解説したうえで、社会保険側の壁(106万円・130万円)との違いにも触れます。
1. 税金の「年収の壁」とは?2025年改正で何が変わった?
「年収の壁」は、収入がある基準を超えると新しい税負担や社会保険負担が発生し、手取りが頭打ちあるいは一時的に逆転する現象を指す通称です。税金側の壁は大きく分けて2種類あります。
- 本人の税金がかかり始める境目:自分の給与収入が一定額を超えると、自分自身に所得税・住民税がかかる
- 家族の控除を受けられる境目:自分の収入が一定額を超えると、扶養している側(親・配偶者)が受けられる扶養控除・配偶者控除などが減る・なくなる
2025年(令和7年度)の税制改正では、この両方の境目が動きました。4つの境目を「誰の給与収入」が「いくらを超えると」「何が起きるか」で整理すると、次のとおりです。
| 境目 | 誰の給与収入か | 超えると何が起きるか | 改正前 → 改正後 |
|---|---|---|---|
| 本人の所得税の壁 | 働く本人(自分自身) | 自分に所得税がかかり始める | 103万円 → 160万円 |
| 扶養の壁(配偶者控除・扶養控除) | 扶養される人(配偶者・子など) | 扶養する側(親・配偶者)が配偶者控除・扶養控除を受けられなくなる | 103万円 → 123万円 |
| 配偶者特別控除の満額の壁 | 配偶者 | 配偶者を扶養する側の控除が満額38万円から段階的に減り始める | 150万円 → 160万円 |
| 特定親族特別控除(新設) | 19歳以上23歳未満の親族(大学生世代の子など) | 扶養する側が収入に応じて受けられる控除(最高63万円)がゼロになる | なし → 188万円(新設) |
これらの改正は令和7年12月1日に施行され、令和7年分以後の所得税から適用されています。
2. 103万円の壁→160万円の壁(基礎控除と給与所得控除の見直し)
最も大きく動いたのが、本人の所得税がかかり始める給与収入の境目です。これまで「103万円の壁」と呼ばれてきた基準が、改正後は実質的に160万円まで引き上げられました。
「103万円」の正体は給与所得控除55万円+基礎控除48万円
そもそも「103万円の壁」は、所得税の計算上、給与収入から差し引ける2つの控除の合計でした。
両方を合わせると55万円+48万円=103万円。給与収入が103万円以下なら課税所得がゼロになるため、所得税がかからない仕組みでした。
改正後は給与所得控除65万円+基礎控除95万円=160万円
令和7年度税制改正では、この2つの控除がそれぞれ引き上げられました。
- 給与所得控除の最低保障額が55万円→65万円に引き上げ
- 基礎控除が合計所得132万円以下の方で48万円→95万円に引き上げ(改正後)
両方を合わせると65万円+95万円=160万円。給与収入が160万円以下で、ほかに所得がなければ所得税はかかりません。
基礎控除95万円は所得が低い人ほど大きい段階制
注意したいのは、改正後の基礎控除は合計所得金額が大きくなるほど段階的に小さくなる構造になっている点です。具体的には次のとおりです。
- 合計所得132万円以下:基礎控除95万円(改正前48万円)
- 132万円超336万円以下:88万円(令和9年分以後は58万円)
- 336万円超489万円以下:68万円(同58万円)
- 489万円超655万円以下:63万円(同58万円)
- 655万円超2,350万円以下:58万円(改正前48万円)
つまり、所得が低い方ほど基礎控除が大きく、所得が一定額を超える方は改正前より少し増える形で恒久化されます。132万円超655万円以下の区分で上乗せされている88万円・68万円・63万円は、令和9年分以後は58万円に下がる時限措置です。
住民税は基礎控除が43万円のまま
ここまで紹介した「160万円の壁」は所得税の基準です。住民税では、給与所得控除の見直し(55万円→65万円)は所得税と同様に適用される一方、基礎控除は今回の改正の対象外で最高43万円のままです。所得税(最高95万円)より基礎控除が小さいぶん、所得税では課税所得がゼロになる収入帯でも住民税では課税所得が残るため、給与収入160万円以下でも住民税が発生する場合があります。なお、住民税側の改正は令和7年分の所得に係る令和8年度分から適用されます。住民税の仕組みは別記事で扱います。
3. 123万円の壁(配偶者控除・扶養控除の境目)
本人の所得税がかからない境目が160万円に動いたあとも、家族の扶養に入れるかどうかの境目は別にあります。これが新しい「123万円の壁」です。
扶養に入るための合計所得金額は58万円以下に拡大
家族の扶養に入る(控除対象配偶者・控除対象扶養親族として、扶養している側が控除を受ける)ための基準は、扶養される人の合計所得金額です。改正後は次のように引き上げられました。
- 控除対象配偶者の合計所得金額の要件:58万円以下(改正前48万円以下、給与のみの場合は給与収入123万円以下)
- 控除対象扶養親族の合計所得金額の要件:58万円以下(改正前48万円以下、給与のみの場合は給与収入123万円以下)
給与所得控除の最低保障が65万円になったため、給与収入123万円から65万円を引いた残り58万円が、合計所得58万円という基準に対応します。給与のみの収入であれば、給与収入123万円以下であれば家族の扶養に入れます。
控除を受けると、扶養している側の税負担が減る
扶養控除・配偶者控除を受けるのは、扶養される本人ではなく扶養している側です。たとえば次のような形になります。
たとえば大学生の子の年間のアルバイト収入が123万円を超えると、これまでは親が受けていた特定扶養親族としての扶養控除63万円が受けられなくなる、という形になります。改正前は103万円が境目だったため、20万円分だけ働ける幅が広がった、と捉えるとイメージしやすいです。
「自分の所得税はかからないけれど親の扶養から外れる」帯がある
ここで読者が混乱しやすいのが、給与収入123万円超〜160万円以下の帯です。
- 自分の所得税:給与収入160万円までかからない
- 親の扶養控除:給与収入123万円を超えると、(後述の特定親族特別控除に該当しない限り)外れる
つまり、本人の所得税がかからないからといって扶養控除も無事とは限りません。とくに大学生のお子さんがいる家庭では、お子さん本人の所得税がかからないラインと、親が受ける扶養控除のラインが別物であることを意識しておくと、思わぬ家計の上振れを防げます。
4. 配偶者特別控除の壁が150万円→160万円に
配偶者の収入が扶養の境目(給与収入123万円)を超えても、すぐに家計負担が増えるわけではありません。「配偶者特別控除」というクッションの仕組みがあるためです。
配偶者特別控除の仕組み
配偶者特別控除は、配偶者が控除対象配偶者の所得を超えても、配偶者の収入に応じて段階的に控除が受けられる仕組みです。改正後の対象は次のとおりです。
- 配偶者の合計所得金額:58万円超〜133万円以下(給与収入のみの場合は123万円超〜201万6千円未満)
- 控除を受ける納税者本人の合計所得金額:1,000万円以下
満額38万円の境目が150万円→160万円に拡大
注目したいのが、配偶者特別控除の満額(38万円)が受けられる収入の境目です。満額が受けられる配偶者の合計所得金額の上限は95万円以下で、改正前(令和2年分〜令和6年分)から据え置きです。動いたのは、その合計所得95万円に対応する給与収入のほうで、内訳は次のとおりです。
- 改正前:給与所得控除55万円+合計所得95万円=給与収入150万円以下まで満額38万円
- 改正後:給与所得控除65万円+合計所得95万円=給与収入160万円以下まで満額38万円
つまり、給与所得控除の最低保障が55万円から65万円に引き上げられたことで、同じ合計所得95万円に対応する給与収入の境目が150万円から160万円へ、10万円分外側に動いた形です。
配偶者の給与収入が160万円を超えると、配偶者特別控除は段階的に減っていき、配偶者の合計所得が133万円を超えると控除がゼロになります(給与収入のみの場合は201万6千円未満が配偶者特別控除の対象)。これが従来「150万円の壁」「201万円の壁」と呼ばれてきた境目です。
「160万円」が2つあるのが分かりにくいポイント
ここまでで「160万円」が2回出てきました。両者は同じ給与収入額ですが、誰の・何の境目かが異なります。
- 本人の所得税の境目(前述):自分自身の給与収入が160万円までなら、自分の所得税がかからない
- 配偶者特別控除の満額の境目(本セクション):配偶者の給与収入が160万円までなら、配偶者を扶養している側が満額38万円の配偶者特別控除を受けられる
たまたま境目の金額が同じ160万円になったのは、本人の所得税の非課税枠が「給与所得控除65万円+基礎控除95万円=160万円」、配偶者特別控除の満額が「給与所得控除65万円+合計所得の上限95万円=160万円」という構造で、基礎控除の額と配偶者特別控除の満額の所得上限がどちらも95万円で並んだためです。自分の話なのか配偶者の話なのかを区別すると整理しやすくなります。
5. 特定親族特別控除の新設(大学生世代のアルバイト)
2025年改正で新しく設けられたのが、特定親族特別控除です。大学生年代のアルバイト収入で扶養を外れることを心配する家庭への対応として導入されました。
対象は19歳以上23歳未満の親族(配偶者は対象外)
特定親族とは、次の要件を満たす人をいいます。
- 納税者と生計を一にする配偶者以外の親族(6親等内の血族および3親等内の姻族)または都道府県知事から養育を委託された児童(里子)
- その年12月31日現在の年齢が19歳以上23歳未満であること
- 青色事業専従者・白色事業専従者ではないこと
- 年間の合計所得金額が58万円超123万円以下(給与のみの場合は給与収入が123万円超188万円以下)
「特定親族」と名前が付いていますが、対象は会社員・自営業を問わず、19歳以上23歳未満の家族を扶養するすべての方です。「特定」という言葉の語感から自分には関係ないと読み飛ばしやすい制度名ですが、大学生・専門学校生の年代のお子さんがいる家庭は、職業を問わず対象になり得ます。
控除額は合計所得に応じて段階的に63万円〜3万円
控除額は特定親族の合計所得金額に応じて次のように段階的に設定されています。
- 合計所得58万円超〜85万円以下(給与収入123万円超〜150万円以下):63万円
- 85万円超〜90万円以下(給与収入150万円超〜155万円以下):61万円
- 以降、段階的に控除額が減少
- 120万円超〜123万円以下(給与収入185万円超〜188万円以下):3万円
- 123万円超(給与収入188万円超):控除なし
特に注目したいのが、合計所得85万円以下(給与収入150万円以下)まで控除額63万円が維持される点です。これは特定扶養親族の扶養控除(63万円)と同じ額です。改正前は給与収入103万円を超えると、親が受けていた特定扶養親族としての扶養控除63万円が一気にゼロになっていたのに対し、改正後は150万円までは特定扶養親族と同じ63万円を維持しつつ、150万円を超えても188万円まで段階的に控除が残る形に変わりました。
年末調整での適用には申告書の提出が必要
年末調整で特定親族特別控除の適用を受ける場合は、給与の支払者(勤務先)に「給与所得者の特定親族特別控除申告書」を提出する必要があります。確定申告で適用を受ける場合は、確定申告書に必要事項を記載します。自動的に適用されるわけではないため、申告書の様式が新しくなった点に注意してください。
6. 社会保険の壁(106万円・130万円)との違い
「税金の壁」と並んで耳にする「106万円の壁」「130万円の壁」は、社会保険(健康保険・厚生年金)にかかわる別の制度です。同じ「年収の壁」と呼ばれますが、判定の仕組みが異なります。
税金の壁と社会保険の壁は別物
両者の違いは次のとおりです。
| 区分 | 内容 | 判定の基準 |
|---|---|---|
| 税金の壁(103万円→160万円・123万円など) | 所得税・住民税の負担、扶養控除・配偶者控除などの対象範囲 | 1年間(1〜12月)の収入の実績 |
| 社会保険の壁(106万円・130万円) | 自分が勤め先の社会保険に加入するか、家族の社会保険上の扶養に入り続けられるか | 月収(106万円側)または見込み年収(130万円側) |
税金の壁は年単位・実績ベースで判定されるのに対して、社会保険の壁は加入要件を満たした時点や見込み収入を基準に判定されるため、判定のタイミングや扱いが違います。給与収入160万円を本人の所得税で見ると非課税の範囲ですが、社会保険側では加入要件を満たせばすでに自分の勤め先で被保険者になっている年収帯です。
社会保険の壁は2025〜2027年に大きく動く
社会保険の壁(106万円・130万円)もここ数年で大きく動くため、税金の壁とあわせて確認するのが現実的です。
7. 家計でできる対応策
2025年改正で「税金の壁」が動いたことで、家計の取り組み方も少し変わります。
「壁の手前で抑える」より「壁の中身を分けて考える」
これまで「103万円の壁」を意識して労働時間を調整してきたパートの配偶者や学生のアルバイトは、改正で控除の境目が広がりました。自分の所得税が発生する境目(給与収入160万円)と、家族の扶養を維持できる境目(給与収入123万円、または特定親族特別控除の対象なら188万円)を分けて考えると、働き方の選択肢が広がります。
- 配偶者控除を維持したい:給与収入123万円以下
- 配偶者特別控除の満額を維持したい:給与収入160万円以下
- 自分の所得税を発生させたくない:給与収入160万円以下
- 大学生世代の親が扶養控除に近い控除(特定親族特別控除)を受けたい:給与収入188万円以下
ただし、社会保険側の壁(106万円・130万円)は税金の壁とは別の仕組みなので、社会保険の負担が発生する境目もあわせて確認してください。
増えた手取りを資産形成に回し、固定費も見直す
控除拡大で家計に残る手取りが増える方は、増えた分を将来に向けた資産形成に回しつつ、固定費の支払い方法もあわせて見直すと、長期的な家計改善につなげられます。具体的には、新NISA・iDeCoでの積立や、通信費・光熱費の支払いをまとめてポイント還元を受ける方法があります。
扶養を外れて働く側はふるさと納税の活用も検討
扶養を外れて自分で所得税・住民税を負担するようになると、ふるさと納税の控除対象になります。自己負担2,000円を引いた金額が所得税・住民税から控除され、寄附先の自治体から返礼品を受け取れる仕組みです。
8. よくある質問
103万円の壁は本当になくなったのですか?
大学生の子が年間140万円のアルバイト収入があります。親の控除はどうなりますか?
配偶者の年収が155万円です。配偶者特別控除はいくら受けられますか?
改正はいつから適用されていますか?
改正後の基礎控除95万円はずっと続きますか?
9. まとめ
2025年(令和7年度)税制改正で動いた税金の年収の壁は、誰の・何の境目かを分けて見ると次のように整理できます。
- 本人の所得税がかかり始める境目:給与収入103万円→160万円(基礎控除95万円+給与所得控除65万円)
- 家族の扶養に入れる境目:給与収入103万円→123万円(合計所得58万円以下が扶養控除・配偶者控除の対象)
- 配偶者特別控除の満額(38万円)が受けられる境目:配偶者の給与収入150万円→160万円
- 大学生世代向けの新制度:特定親族特別控除で、19歳以上23歳未満の親族が給与収入188万円までアルバイトをしても、扶養している側が段階的に最高63万円の控除を受けられる
「103万円の壁が160万円に動いた」という見出しだけだと、すべての境目が160万円にそろったように感じますが、実際は本人の税金・家族の扶養・配偶者特別控除・大学生世代の親の控除がそれぞれ別々の数字で動いています。自分や家族がどの境目に当てはまるかを区別すると、働き方や家計の方針を立てやすくなります。
加えて、税金の壁とは別の仕組みで動く社会保険の壁(106万円・130万円)も2025〜2027年にかけて大きく変わります。働き方を考えるときは、税金側と社会保険側の両方の境目を確認すると、収入が増えた分が手取りにどう反映されるかが見通しやすくなります。
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