103万円・160万円・178万円の壁とは?令和7・令和8年度税制改正で変わる『税金の年収の壁』と特定親族特別控除をわかりやすく解説
※ 2026年7月時点の情報です
「103万円の壁が160万円に上がったって聞いたけど、結局いくらまで働いていいの?」「特定親族特別控除ってよく聞くけど、自分の家には関係ある?」。令和7年度・令和8年度と続いた税制改正で税金側の「年収の壁」が2段階で動き、ニュースで取り上げられる金額もバラバラで分かりづらくなっています。
この記事では、動いた4つの境目を、「誰の」「何の」境目なのかで分けて給与収入ベースで整理します。先に令和7年分(2025年分)と、続く令和8年度税制改正で令和8年分(2026年分)以後に動く金額を並べて示すと次のとおりです。
- 本人の所得税がかかり始める境目:改正前103万円 → 令和7年分は160万円 → 令和8年分・令和9年分は178万円(特例による上乗せ)/令和10年分以後は168万円(特例終了後)
- 家族の扶養(配偶者控除・扶養控除)に入れる境目:改正前103万円 → 令和7年分は123万円 → 令和8年分以後は同一生計配偶者・扶養親族の合計所得金額要件が62万円以下(現行58万円以下)に引き上げ、給与収入ベースでは令和8・9年分136万円(特例含む)/令和10年分以後131万円
- 配偶者特別控除の満額(38万円)が受けられる境目:改正前150万円 → 令和7年分は160万円 → 令和8・9年分は169万円(給与所得控除の特例含む)/令和10年分以後は164万円
- 特定親族特別控除(令和7年度改正で新設):19歳以上23歳未満の親族が給与収入188万円まで働いても、扶養する側が段階的に最高63万円の控除を受けられる(令和8年度税制改正大綱では特定親族特別控除の見直しは対象外)
令和7年度改正のポイントは「103万円の壁を160万円に動かした」こと、令和8年度改正のポイントは「令和8年12月1日に施行し、令和8年分以後の所得税でさらに基礎控除・給与所得控除・扶養親族の要件を4万円ずつ引き上げた」ことです。この記事ではまず令和7年度改正の骨格を押さえたうえで、令和8年度改正での上乗せを別セクションでまとめます。加えて、社会保険側の壁(106万円・130万円)との違いにも触れます。
1. 税金の「年収の壁」とは?令和7・令和8年度改正で何が変わった?
「年収の壁」は、収入がある基準を超えると新しい税負担や社会保険負担が発生し、手取りが頭打ちあるいは一時的に逆転する現象を指す通称です。税金側の壁は大きく分けて2種類あります。
- 本人の税金がかかり始める境目:自分の給与収入が一定額を超えると、自分自身に所得税・住民税がかかる
- 家族の控除を受けられる境目:自分の収入が一定額を超えると、扶養している側(親・配偶者)が受けられる扶養控除・配偶者控除などが減る・なくなる
令和7年度税制改正で両方の境目が大きく動き、続く令和8年度税制改正でさらに基礎控除・給与所得控除・扶養親族等の所得要件が上乗せされました。4つの境目を「誰の給与収入」が「いくらを超えると」「何が起きるか」で整理すると、次のとおりです。
| 境目 | 誰の給与収入か | 超えると何が起きるか | 改正前 | 令和7年分 | 令和8年分・令和9年分 | 令和10年分以後 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 本人の所得税の壁 | 働く本人(自分自身) | 自分に所得税がかかり始める | 103万円 | 160万円 | 178万円 | 168万円 |
| 扶養の壁(配偶者控除・扶養控除) | 扶養される人(配偶者・子など) | 扶養する側(親・配偶者)が配偶者控除・扶養控除を受けられなくなる | 103万円 | 123万円 | 136万円 | 131万円 |
| 配偶者特別控除の満額の壁 | 配偶者 | 配偶者を扶養する側の控除が満額38万円から段階的に減り始める | 150万円 | 160万円 | 169万円 | 164万円 |
| 特定親族特別控除(令和7年度改正で新設) | 19歳以上23歳未満の親族(大学生世代の子など) | 扶養する側が収入に応じて受けられる控除(最高63万円)がゼロになる | 制度なし | 188万円 | 188万円 | 188万円 |
令和7年度改正は令和7年12月1日に施行され、令和7年分以後の所得税から適用されています。続く令和8年度改正は令和8年12月1日に施行され、令和8年分以後の所得税から適用されます。令和8年12月に行う年末調整など、令和8年12月以後の源泉徴収事務に変更が生じますが、令和8年11月までの源泉徴収事務に変更はありません。
2. 103万円の壁→160万円の壁(令和7年度改正:基礎控除と給与所得控除の見直し)
まず令和7年度改正で最も大きく動いたのが、本人の所得税がかかり始める給与収入の境目です。これまで「103万円の壁」と呼ばれてきた基準が、令和7年分の所得税では160万円まで引き上げられました。続く令和8年度改正でさらに上乗せされる部分は、次のセクションで説明します。
「103万円」の正体は給与所得控除55万円+基礎控除48万円
そもそも「103万円の壁」は、所得税の計算上、給与収入から差し引ける2つの控除の合計でした。
両方を合わせると55万円+48万円=103万円。給与収入が103万円以下なら課税所得がゼロになるため、所得税がかからない仕組みでした。
令和7年分では給与所得控除65万円+基礎控除95万円=160万円
令和7年度税制改正では、この2つの控除がそれぞれ引き上げられました。
- 給与所得控除の最低保障額が55万円→65万円に引き上げ
- 基礎控除が合計所得132万円以下の方で48万円→95万円に引き上げ(改正後)
両方を合わせると65万円+95万円=160万円。令和7年分については、給与収入が160万円以下で、ほかに所得がなければ所得税はかかりません。令和8年分以後は、令和8年度改正でさらに給与所得控除の最低保障額が69万円(令和8・9年分は特例で+5万円=74万円)に、基礎控除の本則が62万円にそれぞれ引き上げられ、境目もさらに動きます(詳細は次のセクション)。
令和7年分の基礎控除は所得が低い人ほど大きい段階制
注意したいのは、令和7年度改正後の基礎控除は合計所得金額が大きくなるほど段階的に小さくなる構造になっている点です。令和7年分の基礎控除は次のとおりです。
- 合計所得132万円以下:基礎控除95万円(改正前48万円)
- 132万円超336万円以下:88万円
- 336万円超489万円以下:68万円
- 489万円超655万円以下:63万円
- 655万円超2,350万円以下:58万円(改正前48万円)
所得が低い方ほど基礎控除が大きく、所得が一定額を超える方は改正前より少し増える形になっています。この令和7年分の段階構造は、132万円超655万円以下の区分で置かれていた上乗せ(30万・10万・5万)が令和8年度税制改正で「令和7年分以後の各年分の基礎控除等の特例」として再設計されたため、令和8年分以後は別の段階構造に置き換わります(次のセクション)。
住民税は基礎控除が43万円のまま
ここまで紹介した「160万円の壁」は所得税の基準です。住民税では、給与所得控除の見直し(55万円→65万円)は所得税と同様に適用される一方、基礎控除は今回の改正の対象外で最高43万円のままです。所得税(最高95万円)より基礎控除が小さいぶん、所得税では課税所得がゼロになる収入帯でも住民税では課税所得が残るため、給与収入160万円以下でも住民税が発生する場合があります。なお、住民税側の改正は令和7年分の所得に係る令和8年度分から適用されます。住民税の仕組みは別記事で扱います。
3. 令和8年度改正でさらに動く「178万円の壁」
令和7年度改正で「103万円→160万円」に動いた本人の所得税の境目は、続く令和8年度税制改正で令和8年分以後さらに引き上げられます。令和8年3月31日に議決・公布された「所得税法等の一部を改正する法律案」(第221回国会・法律第12号)による改正で、令和8年12月1日に施行され、令和8年分以後の所得税に適用されます。
基礎控除の本則が58万円→62万円へ
令和8年度改正では、まず基礎控除の本則が合計所得金額2,350万円以下の個人について4万円引き上げられます。改正後の基礎控除の本則(加算前)は次のとおりです。
- 合計所得金額2,350万円以下:62万円(現行58万円)
- 2,350万円超2,400万円以下:48万円
- 2,400万円超2,450万円以下:32万円
- 2,450万円超2,500万円以下:16万円
給与所得控除の最低保障額が65万円→69万円へ、特例で令和8・9年分は74万円
給与所得控除については、65万円の最低保障額が69万円に引き上げられます。あわせて、令和8年および令和9年における給与所得控除の最低保障額を5万円引き上げる特例が創設されるため、令和8年分・9年分は実質的に最低保障額が74万円(69万円+特例5万円)となり、令和10年分以後は69万円に戻ります。
「令和7年分以後の各年分の基礎控除等の特例」で加算額が再設計
令和7年度改正の衆議院修正で置かれた基礎控除の上乗せ加算(132万〜655万円の帯で30万・10万・5万など)は、令和8年度税制改正の「令和7年分以後の各年分の基礎控除等の特例」で再設計されました。令和8年分以後は次の加算額が本則に上乗せされます。
- 令和8年分・令和9年分(合計所得655万円以下が対象)
- 合計所得489万円以下:加算額42万円
- 合計所得489万円超655万円以下:加算額5万円
- 令和10年分以後(合計所得132万円以下が対象):加算額37万円
本則62万円と加算額を合わせた令和8年分以後の基礎控除は次のとおりです。
- 令和8年分・9年分:
- 合計所得489万円以下:基礎控除104万円(62万+42万)
- 489万円超655万円以下:67万円(62万+5万)
- 655万円超2,350万円以下:62万円(加算なし)
- 令和10年分以後:
- 合計所得132万円以下:基礎控除99万円(62万+37万)
- 132万円超2,350万円以下:62万円(加算なし)
本人の所得税がかかり始める境目は令和8・9年分で178万円
改正後の給与所得控除の最低保障額と基礎控除を合わせると、令和8年分・9年分の非課税ラインは178万円(給与所得控除74万円+基礎控除104万円)まで動きます。令和10年分以後は168万円(給与所得控除69万円+基礎控除99万円、合計所得132万円以下)となります。
- 令和7年分:給与所得控除65万円+基礎控除95万円=160万円まで所得税ゼロ
- 令和8年分・9年分:給与所得控除74万円+基礎控除104万円=178万円まで所得税ゼロ
- 令和10年分以後:給与所得控除69万円+基礎控除99万円=168万円まで所得税ゼロ(合計所得132万円以下)
なお、令和8年12月に行う年末調整など、令和8年12月以後の源泉徴収事務に変更が生じます(令和8年11月までの源泉徴収事務に変更は生じません)。給与所得の源泉徴収税額表の改正は令和9年1月1日以後に支払うべき給与等について適用されるため、令和8年分の年末調整で新基準による精算が行われる形になります。
扶養親族等の合計所得金額要件も58万円→62万円へ
令和8年度改正では、同一生計配偶者及び扶養親族の合計所得金額要件が62万円以下(現行:58万円以下)に引き上げられます。給与所得控除の最低保障額の引き上げと合わせると、給与のみの収入で扶養に入れる境目は次のように動きます。
- 令和7年分:合計所得58万円以下=給与収入123万円以下(給与所得控除65万円+58万円)
- 令和8年分・9年分:合計所得62万円以下=給与収入136万円以下(給与所得控除74万円+62万円、特例含む)
- 令和10年分以後:合計所得62万円以下=給与収入131万円以下(給与所得控除69万円+62万円)
配偶者特別控除の満額(38万円)の合計所得の上限95万円は令和7年度改正から据え置きで、令和8年度改正でも変更されません。ただし給与所得控除の最低保障額が動くぶん、給与収入ベースの境目は次のように連動します。
- 令和7年分:給与所得控除65万円+合計所得95万円=160万円まで満額38万円
- 令和8年分・9年分:給与所得控除74万円+合計所得95万円=169万円まで満額38万円(特例含む)
- 令和10年分以後:給与所得控除69万円+合計所得95万円=164万円まで満額38万円
4. 123万円の壁(配偶者控除・扶養控除の境目)
本人の所得税がかからない境目が動いたあとも、家族の扶養に入れるかどうかの境目は別にあります。ここでは令和7年分の「123万円の壁」の骨格を押さえたうえで、令和8年分以後にどう動くかを確認します。
扶養に入るための合計所得金額は58万円以下(令和7年分)/62万円以下(令和8年分以後)
家族の扶養に入る(控除対象配偶者・控除対象扶養親族として、扶養している側が控除を受ける)ための基準は、扶養される人の合計所得金額です。令和7年度改正後は次のように引き上げられました。
- 令和7年分の控除対象配偶者の合計所得金額の要件:58万円以下(改正前48万円以下、給与のみの場合は給与収入123万円以下)
- 令和7年分の控除対象扶養親族の合計所得金額の要件:58万円以下(改正前48万円以下、給与のみの場合は給与収入123万円以下)
令和7年分では、給与所得控除の最低保障が65万円になったため、給与収入123万円から65万円を引いた残り58万円が、合計所得58万円という基準に対応します。給与のみの収入であれば、令和7年分は給与収入123万円以下であれば家族の扶養に入れます。
令和8年度改正では、同一生計配偶者及び扶養親族の合計所得金額要件が62万円以下(現行58万円以下)に引き上げられます。給与所得控除の最低保障額もあわせて動くため、給与のみの収入で扶養に入れる境目は令和8年分・9年分は136万円以下(給与所得控除74万円+合計所得62万円)、令和10年分以後は131万円以下(給与所得控除69万円+合計所得62万円)となります。
控除を受けると、扶養している側の税負担が減る
扶養控除・配偶者控除を受けるのは、扶養される本人ではなく扶養している側です。たとえば次のような形になります。
たとえば大学生の子の令和7年分のアルバイト収入が123万円を超えると、これまでは親が受けていた特定扶養親族としての扶養控除63万円が受けられなくなる、という形になります。改正前は103万円が境目だったため、20万円分だけ働ける幅が広がった、と捉えるとイメージしやすいです。令和8年分以後は、扶養親族の合計所得金額要件が62万円以下に拡大されるため、給与のみの収入で136万円以下(令和10年分以後は131万円以下)まで扶養の範囲に入ります。
「自分の所得税はかからないけれど親の扶養から外れる」帯がある
ここで読者が混乱しやすいのが、本人の所得税の境目と家族の扶養の境目のずれです。令和7年分と令和8年分以後で幅は動きますが、どちらの年分でも扶養の境目のほうが低い(先に外れる)構造は変わりません。
- 令和7年分:自分の所得税は160万円までかからない/親の扶養控除は給与収入123万円を超えると(特定親族特別控除に該当しない限り)外れる
- 令和8年分・9年分:自分の所得税は178万円までかからない/親の扶養控除は給与収入136万円を超えると外れる
- 令和10年分以後:自分の所得税は168万円までかからない/親の扶養控除は給与収入131万円を超えると外れる
つまり、本人の所得税がかからないからといって扶養控除も無事とは限りません。とくに大学生のお子さんがいる家庭では、お子さん本人の所得税がかからないラインと、親が受ける扶養控除のラインが別物であることを意識しておくと、思わぬ家計の上振れを防げます。
5. 配偶者特別控除の壁が150万円→160万円に
配偶者の収入が扶養の境目を超えても、すぐに家計負担が増えるわけではありません。「配偶者特別控除」というクッションの仕組みがあるためです。
配偶者特別控除の仕組み
配偶者特別控除は、配偶者が控除対象配偶者の所得を超えても、配偶者の収入に応じて段階的に控除が受けられる仕組みです。令和7年分の対象は次のとおりです。
- 配偶者の合計所得金額:58万円超〜133万円以下(給与収入のみの場合は123万円超〜201万6千円未満)
- 控除を受ける納税者本人の合計所得金額:1,000万円以下
なお、令和8年度税制改正大綱では、配偶者特別控除の合計所得金額の区分そのものは見直しの対象外で、下限58万円超・上限133万円以下・満額の合計所得95万円以下という枠組みは維持されます。動くのは合計所得金額に対応する給与収入のほうです(給与所得控除の最低保障額が引き上げられるため)。
満額38万円の境目が150万円→160万円→令和8・9年分は169万円に拡大
注目したいのが、配偶者特別控除の満額(38万円)が受けられる収入の境目です。満額が受けられる配偶者の合計所得金額の上限は95万円以下で、改正前(令和2年分〜令和6年分)から据え置きです。動いたのは、その合計所得95万円に対応する給与収入のほうで、内訳は次のとおりです。
- 改正前:給与所得控除55万円+合計所得95万円=給与収入150万円以下まで満額38万円
- 令和7年分:給与所得控除65万円+合計所得95万円=給与収入160万円以下まで満額38万円
- 令和8年分・令和9年分:給与所得控除74万円+合計所得95万円=給与収入169万円以下まで満額38万円(給与所得控除の特例含む)
- 令和10年分以後:給与所得控除69万円+合計所得95万円=給与収入164万円以下まで満額38万円
つまり、令和7年度改正で給与所得控除の最低保障が55万円から65万円に引き上げられたことで、まず給与収入の境目が150万円から160万円へ10万円分外側に動き、続く令和8年度改正で最低保障が69万円(令和8・9年分は特例で74万円)に引き上げられると、境目はさらに外側に動きます。
配偶者の給与収入が満額の境目を超えると、配偶者特別控除は段階的に減っていき、配偶者の合計所得が133万円を超えると控除がゼロになります(令和7年分の給与収入では201万6千円未満が対象)。これが従来「150万円の壁」「201万円の壁」と呼ばれてきた境目です。
「160万円」「178万円」が並ぶのが分かりにくいポイント
ここまでで「160万円」「178万円」など複数の金額が出てきました。同じ数字でも、誰の・何の境目かが異なります。令和7年分の場合、両者ともに「給与所得控除65万円+95万円=160万円」で金額がそろいますが、意味は別物です。
- 本人の所得税の境目(第2・3セクション):自分自身の給与収入がその境目以下なら、自分の所得税がかからない
- 配偶者特別控除の満額の境目(本セクション):配偶者の給与収入がその境目以下なら、配偶者を扶養している側が満額38万円の配偶者特別控除を受けられる
令和7年分は本人の所得税の非課税枠と配偶者特別控除の満額の境目が両方とも「給与所得控除65万円+所得上限95万円=160万円」でそろっていましたが、令和8年分以後は基礎控除の本則・加算と配偶者特別控除の所得上限95万円が別々に動くため、本人側(178万円)と配偶者側(169万円)で金額が分かれます。自分の話なのか配偶者の話なのかを区別すると整理しやすくなります。
6. 特定親族特別控除の新設(大学生世代のアルバイト)
令和7年度改正で新しく設けられたのが、特定親族特別控除です。大学生年代のアルバイト収入で扶養を外れることを心配する家庭への対応として導入されました。令和8年度税制改正大綱では、特定親族特別控除は見直しの対象外とされており、以下で紹介する合計所得金額の区分と控除額の段階は現時点で公表されている令和7年分の内容です(令和8年分以後の実際の運用については、公布後の政省令や国税庁の解説で確認してください)。
対象は19歳以上23歳未満の親族(配偶者は対象外)
特定親族とは、次の要件を満たす人をいいます。
- 納税者と生計を一にする配偶者以外の親族(6親等内の血族および3親等内の姻族)または都道府県知事から養育を委託された児童(里子)
- その年12月31日現在の年齢が19歳以上23歳未満であること
- 青色事業専従者・白色事業専従者ではないこと
- 年間の合計所得金額が58万円超123万円以下(給与のみの場合は給与収入が123万円超188万円以下)
「特定親族」と名前が付いていますが、対象は会社員・自営業を問わず、19歳以上23歳未満の家族を扶養するすべての方です。「特定」という言葉の語感から自分には関係ないと読み飛ばしやすい制度名ですが、大学生・専門学校生の年代のお子さんがいる家庭は、職業を問わず対象になり得ます。
控除額は合計所得に応じて段階的に63万円〜3万円
控除額は特定親族の合計所得金額に応じて次のように段階的に設定されています。
- 合計所得58万円超〜85万円以下(給与収入123万円超〜150万円以下):63万円
- 85万円超〜90万円以下(給与収入150万円超〜155万円以下):61万円
- 以降、段階的に控除額が減少
- 120万円超〜123万円以下(給与収入185万円超〜188万円以下):3万円
- 123万円超(給与収入188万円超):控除なし
特に注目したいのが、合計所得85万円以下(給与収入150万円以下)まで控除額63万円が維持される点です。これは特定扶養親族の扶養控除(63万円)と同じ額です。改正前は給与収入103万円を超えると、親が受けていた特定扶養親族としての扶養控除63万円が一気にゼロになっていたのに対し、改正後は150万円までは特定扶養親族と同じ63万円を維持しつつ、150万円を超えても188万円まで段階的に控除が残る形に変わりました。
年末調整での適用には申告書の提出が必要
年末調整で特定親族特別控除の適用を受ける場合は、給与の支払者(勤務先)に「給与所得者の特定親族特別控除申告書」を提出する必要があります。確定申告で適用を受ける場合は、確定申告書に必要事項を記載します。自動的に適用されるわけではないため、申告書の様式が新しくなった点に注意してください。
7. 社会保険の壁(106万円・130万円)との違い
「税金の壁」と並んで耳にする「106万円の壁」「130万円の壁」は、社会保険(健康保険・厚生年金)にかかわる別の制度です。同じ「年収の壁」と呼ばれますが、判定の仕組みが異なります。
税金の壁と社会保険の壁は別物
両者の違いは次のとおりです。
| 区分 | 内容 | 判定の基準 |
|---|---|---|
| 税金の壁(103万円→160万円・178万円・123万円など) | 所得税・住民税の負担、扶養控除・配偶者控除などの対象範囲 | 1年間(1〜12月)の収入の実績 |
| 社会保険の壁(106万円・130万円) | 自分が勤め先の社会保険に加入するか、家族の社会保険上の扶養に入り続けられるか | 月収(106万円側)または見込み年収(130万円側) |
税金の壁は年単位・実績ベースで判定されるのに対して、社会保険の壁は加入要件を満たした時点や見込み収入を基準に判定されるため、判定のタイミングや扱いが違います。給与収入160万円を本人の所得税で見ると令和7年分では非課税の範囲ですが、社会保険側では加入要件を満たせばすでに自分の勤め先で被保険者になっている年収帯です。
社会保険の壁も2025〜2027年に大きく動く
社会保険の壁(106万円・130万円)もここ数年で大きく動くため、税金の壁とあわせて確認するのが現実的です。
8. 家計でできる対応策
令和7年度・令和8年度の税制改正で「税金の壁」が2段階で動いたことで、家計の取り組み方も少し変わります。
「壁の手前で抑える」より「壁の中身を分けて考える」
これまで「103万円の壁」を意識して労働時間を調整してきたパートの配偶者や学生のアルバイトは、改正で控除の境目が広がりました。自分の所得税が発生する境目、家族の扶養を維持できる境目、配偶者特別控除の満額の境目、特定親族特別控除の対象範囲を年分ごとに分けて考えると、働き方の選択肢が広がります。令和7年分と令和8年分以後で主要な境目は次のとおりです。
- 配偶者控除を維持したい:令和7年分は給与収入123万円以下/令和8年分・9年分は136万円以下/令和10年分以後は131万円以下
- 配偶者特別控除の満額を維持したい:令和7年分は給与収入160万円以下/令和8年分・9年分は169万円以下/令和10年分以後は164万円以下
- 自分の所得税を発生させたくない:令和7年分は給与収入160万円以下/令和8年分・9年分は178万円以下/令和10年分以後は168万円以下
- 大学生世代の親が特定親族特別控除を受けたい:給与収入188万円以下(令和8年度改正では見直し対象外)
ただし、社会保険側の壁(106万円・130万円)は税金の壁とは別の仕組みなので、社会保険の負担が発生する境目もあわせて確認してください。
増えた手取りを資産形成に回し、固定費も見直す
控除拡大で家計に残る手取りが増える方は、増えた分を将来に向けた資産形成に回しつつ、固定費の支払い方法もあわせて見直すと、長期的な家計改善につなげられます。具体的には、新NISA・iDeCoでの積立や、通信費・光熱費の支払いをまとめてポイント還元を受ける方法があります。
扶養を外れて働く側はふるさと納税の活用も検討
扶養を外れて自分で所得税・住民税を負担するようになると、ふるさと納税の控除対象になります。自己負担2,000円を引いた金額が所得税・住民税から控除され、寄附先の自治体から返礼品を受け取れる仕組みです。
9. よくある質問
103万円の壁は本当になくなったのですか?
大学生の子が年間140万円のアルバイト収入があります。親の控除はどうなりますか?
配偶者の年収が155万円です。配偶者特別控除はいくら受けられますか?
改正はいつから適用されていますか?
令和8年分の基礎控除104万円や給与所得控除74万円はずっと続きますか?
10. まとめ
令和7年度・令和8年度と続いた税制改正で動いた税金の年収の壁は、誰の・何の境目かを年分ごとに分けて見ると次のように整理できます。
- 本人の所得税がかかり始める境目:改正前103万円 → 令和7年分は160万円(基礎控除95万円+給与所得控除65万円)→ 令和8年分・9年分は178万円(基礎控除104万円+給与所得控除74万円、特例含む)→ 令和10年分以後は168万円(基礎控除99万円+給与所得控除69万円)
- 家族の扶養に入れる境目:改正前103万円 → 令和7年分は123万円(合計所得58万円以下)→ 令和8年分以後は合計所得62万円以下に引き上げ、給与収入ベースで令和8・9年分136万円、令和10年分以後131万円
- 配偶者特別控除の満額(38万円)が受けられる境目:配偶者の給与収入150万円 → 令和7年分は160万円 → 令和8・9年分は169万円 → 令和10年分以後は164万円
- 大学生世代向けの新制度:特定親族特別控除で、19歳以上23歳未満の親族が給与収入188万円までアルバイトをしても、扶養している側が段階的に最高63万円の控除を受けられる(令和8年度改正では見直し対象外)
「103万円の壁が160万円に動いた」という見出しだけだと、すべての境目が160万円にそろったように感じますが、実際は本人の税金・家族の扶養・配偶者特別控除・大学生世代の親の控除がそれぞれ別々の数字で動き、令和8年度改正でさらに一段動きます。自分や家族がどの境目に当てはまるかを年分ごとに区別すると、働き方や家計の方針を立てやすくなります。
加えて、税金の壁とは別の仕組みで動く社会保険の壁(106万円・130万円)も2025〜2027年にかけて大きく変わります。働き方を考えるときは、税金側と社会保険側の両方の境目を確認すると、収入が増えた分が手取りにどう反映されるかが見通しやすくなります。また、令和8年度改正の変更は令和8年6月支給の住民税・令和8年12月の年末調整の両方に影響するため、実際の家計への反映を知りたい方は2026年6月から手取りはどう変わる?基礎控除引き上げ・住民税新年度の影響も参考にしてください。
こちらの記事もおすすめ
この記事と一緒によく読まれています