退職金の税金はいくら?退職所得控除の計算とiDeCo一時金との受け取り順ルール【2026年改正対応】
※ 2026年10月時点の情報です
「退職金を受け取ったら、税金でどれくらい引かれるんだろう」定年や転職が近づくと気になるテーマです。退職金は給与や賞与とは別のルールで課税され、長年の勤務に対する「退職所得」として、ほかの所得と分けて税額を計算する分離課税のしくみが使われます。退職所得控除という大きな控除があるため、同じ金額を給与で受け取るより税負担は軽くなります。
さらに2026年1月から、iDeCo(個人型確定拠出年金)を一時金で受け取ってから退職金を受け取る場合の判定ルールが変わりました。この記事では、退職金にかかる税金の計算方法を具体例で整理したうえで、iDeCoとの受け取り順で気をつけたい点までまとめます。
1. まず結論:退職金の税金と2026年の変更点
先に要点を押さえておきます。退職金の税金について知っておきたいことは次のとおりです。
- 退職金は「退職所得」として分離課税され、勤続年数に応じた退職所得控除を引いた残りのさらに2分の1にだけ課税されるため、給与で同額を受け取る場合より税負担は軽くなります
- 勤務先に「退職所得の受給に関する申告書」を出しておけば、原則として退職金の支払時に正しい税額が源泉徴収され、確定申告は不要です
- 2026年1月1日以後に受け取るiDeCoの老齢一時金から、iDeCoを先に受け取ってあとから退職金を受け取るときの退職所得控除の重複判定が、従来の「前年以前4年内(通称5年ルール)」から「前年以前9年内(通称10年ルール)」に延びました
退職金の税金は「いくら引かれるか」だけでなく、「iDeCoや企業年金をいつ・どの形で受け取るか」とセットで考えると、控除を無駄なく使いやすくなります。順番に見ていきましょう。
2. 退職金にかかる税金の仕組み
退職金にかかる所得税・住民税は、給与とは別の優遇されたしくみで計算されます。ポイントは3つあります。
① 退職所得は他の所得と分けて課税される(分離課税)
退職金は「退職所得」に分類され、原則として給与などほかの所得と分離して所得税額を計算します。給与や年金と合算して累進税率が高くなる、ということが起きにくいしくみです。
退職所得の金額は、次の式で求めます。
退職所得控除を引いたうえ、残った金額のさらに半分にしか課税されないため、税負担が軽くなります。なお、役員などとしての勤続年数が5年以下の場合(特定役員退職手当等)はこの2分の1計算が使えず、役員等以外でも勤続年数が5年以下の場合は控除後300万円を超える部分について2分の1計算の対象外になるという例外があります。
② iDeCoや企業型DCの一時金も「退職所得」になる
退職金は会社から受け取るものだけではありません。確定拠出年金法にもとづく企業型年金・個人型年金(iDeCo)から老齢給付金として受け取る一時金なども、退職所得とみなされます。iDeCoを一時金で受け取ると、掛金を拠出していた加入年数を勤続年数とみなして退職所得控除を計算します。
会社の退職金とiDeCoの一時金はどちらも退職所得控除を使えますが、同じ年や近い年にまとめて受け取ると控除が重複して調整されることがあります。これが後半で説明する「受け取り順ルール」の話につながります。
③ 住民税も退職金の支払時に差し引かれる
退職所得には所得税だけでなく住民税もかかります。退職所得にかかる個人住民税は、退職所得の金額に市町村民税6%・道府県民税4%(合計10%)を乗じて計算し、退職金の支払時に特別徴収(天引き)されます。住民税は通常、前年の所得をもとに翌年6月から後払いで徴収されますが、退職所得については退職金を受け取るその場で清算される点が異なります。
3. 退職所得控除の計算方法
退職金の税額を左右するのが退職所得控除です。勤続年数が長いほど控除額が大きくなります。計算式は勤続年数で2段階に分かれます。
| 勤続年数 | 退職所得控除額の計算式 |
|---|---|
| 20年以下 | 40万円 × 勤続年数(80万円に満たない場合は80万円) |
| 20年超 | 800万円 + 70万円 ×(勤続年数 − 20年) |
控除額の計算式は勤続20年以下は「40万円×勤続年数(最低80万円)」、20年超は「800万円+70万円×(勤続年数−20年)」です。勤続20年を境に、1年あたりの控除額が40万円から70万円へ増える点が特徴です。
勤続年数は、1年未満の端数があるときは1年に切り上げて数えます。たとえば38年3か月勤務なら39年として計算します。
勤続年数ごとの控除額の目安は次のとおりです。
- 勤続10年:40万円 × 10年 = 400万円
- 勤続20年:40万円 × 20年 = 800万円
- 勤続30年:800万円 + 70万円 ×(30 − 20)= 1,500万円
- 勤続38年:800万円 + 70万円 ×(38 − 20)= 2,060万円
このように、長く勤めた人ほど退職所得控除が大きくなり、退職金のうち課税される部分は小さくなります。
4. 税額はいくら?計算の流れと具体例
ここまでの式を使って、実際の税額の出し方を見ていきます。計算は次の順番で進みます。
税額が決まるまでの流れ
退職金の所得税は、次の手順で計算します。
- 退職所得控除額を勤続年数から求める
- 退職金から控除額を引き、残りを2分の1にして退職所得の金額を出す(1,000円未満切り捨て)
- 退職所得の金額に所得税の超過累進税率を適用し、復興特別所得税(基準所得税額の2.1%)を加えて所得税額を出す
たとえば、勤続30年で退職金2,000万円を受け取るケースを考えます。
- 退職所得控除額:800万円 + 70万円 ×(30 − 20)= 1,500万円
- 退職所得の金額:(2,000万円 − 1,500万円)× 2分の1 = 250万円
この250万円にだけ所得税・住民税がかかります。退職金2,000万円のうち1,750万円は課税されず、残った250万円に対して分離課税されるため、同じ2,000万円を給与で受け取る場合よりかなり軽い負担になります。
「退職所得の受給に関する申告書」を必ず出す
退職金を受け取るときは、勤務先に「退職所得の受給に関する申告書」を提出します。これを出しておけば、退職所得控除を反映した正しい税額が退職金の支払時に源泉徴収され、原則として確定申告は不要です。
一方で、この申告書を提出しなかった場合は、退職金の支給額に一律20.42%の税率を乗じた所得税・復興特別所得税が源泉徴収されます。退職所得控除が反映されないため多めに差し引かれ、払いすぎた分を取り戻すには自分で確定申告をして精算する必要があります。申告書は退職時に勤務先から案内されることが多いので、提出漏れがないか確認しておきましょう。
5. 【2026年改正】iDeCo一時金と退職金の受け取り順ルール
会社の退職金とは別に、iDeCoや企業型DCを一時金で受け取る予定がある人は、受け取る「順番」と「間隔」に注意が必要です。どちらも退職所得控除の対象ですが、近い時期にまとめて受け取ると控除が重複して調整されるためです。
なぜ重複が調整されるのか
退職所得控除は勤続年数(iDeCoは加入年数)で決まります。先に受け取った一時金の勤続・加入期間と、あとから受け取る退職金の勤続期間が同じ年に重なっていると、その重なった年数分の控除は二重には使えません。あとから受け取る退職手当等の退職所得控除額から、重複期間の年数に応じた控除額相当が差し引かれるしくみになっているからです。この重複を避けられるかどうかが、受け取る順番と間隔で変わります。
① iDeCoを先に受け取り、あとから退職金(2026年1月から10年ルールに)
iDeCoの老齢一時金を先に受け取り、そのあとに会社の退職金を受け取る場合、退職金側の退職所得控除を計算するときに、先に受け取ったiDeCo一時金との重複をチェックします。
2026年(令和8年)1月1日以後に受け取るiDeCoの老齢一時金については、退職金を受け取る年の「前年以前9年内」にその一時金を受け取っていると、重複期間が調整されます。言い換えると、iDeCoを一時金で受け取ってから退職金まで10年以上あければ、それぞれで退職所得控除をフルに使えます。これが通称「10年ルール」です。
2025年までに受け取ったiDeCo一時金は、従来どおり退職金を受け取る年の「前年以前4年内」で判定(通称5年ルール)されます。つまり、「何年あければ重複を避けられるか」は、iDeCo一時金を受け取るのが2025年までか2026年以後かで変わります。これから受け取り方を計画する人は、新しい10年ルールを前提に考えると安全です。
② 退職金を先に受け取り、あとからiDeCo(19年ルール)
逆に、会社の退職金を先に受け取ってから、あとでiDeCoを一時金で受け取る場合は、iDeCo側の退職所得控除を計算するときに退職金との重複をチェックします。
この場合は、iDeCo一時金を受け取る年の「前年以前19年内」に退職金を受け取っていると、重複期間が調整されます。退職金を受け取ってからiDeCoまで20年あける必要があり、現実にはこの間隔を空けるのは難しいケースが多くなります。そのため、両方を一時金でフル控除したい場合は、①のようにiDeCoを先に受け取る順番のほうが間隔の条件を満たしやすくなります。
受け取り方は一時金だけではない
iDeCoや退職金は、一時金で一括受け取りするほかに、年金形式で分割して受け取る方法や、両者を組み合わせる方法もあります。年金形式で受け取る分は退職所得ではなく雑所得(公的年金等控除の対象)として扱われ、課税のしくみが変わります。退職所得控除・公的年金等控除・社会保険料への影響まで含めると最適な受け取り方は人によって異なるため、金額が大きい場合は勤務先や金融機関、税務署・税理士に自分のケースを確認すると安心です。
6. 退職前に確認・準備しておきたいこと
退職金の税金で損をしないために、退職が近づいたらチェックしておきたいことを整理します。
- 「退職所得の受給に関する申告書」を提出する:提出すれば退職所得控除が反映され、原則確定申告は不要です。未提出だと一律20.42%が源泉徴収され、取り戻すには確定申告が必要になります
- 自分の勤続年数と退職所得控除額を把握する:勤続年数は1年未満切り上げです。控除額の目安が分かれば、課税される金額もおおよそ見積もれます
- iDeCo・企業型DCの受け取り時期を退職金と合わせて考える:2026年以後に受け取るiDeCo一時金は10年ルールの対象です。退職金と近い時期に一時金で受け取る予定があるなら、間隔と順番を早めに確認しておきましょう
- 医療費控除や寄附金控除などを使う年は確定申告を検討する:退職所得は申告書提出で源泉徴収が完結しますが、ほかに申告したい控除がある年は確定申告が必要になる場合があります
iDeCoをこれから活用する人や、老後資金づくりの全体像から受け取り方を考えたい人は、制度そのもののしくみもあわせて押さえておくと判断しやすくなります。
7. よくある質問
退職金にも税金はかかりますか?
退職所得の受給に関する申告書を出さないとどうなりますか?
iDeCoを一時金で受け取ると退職金の控除は減りますか?
退職金を先に受け取ってからiDeCoを受け取る場合は何年あければよいですか?
退職金にかかる住民税はいつ払いますか?
8. まとめ
退職金の税金のポイントを振り返ります。
- 退職金は「退職所得」として分離課税され、退職所得控除を引いた残りの2分の1にだけ課税されるため、給与で同額を受け取るより税負担は軽くなります
- 退職所得控除は勤続20年以下が「40万円×年数」、20年超が「800万円+70万円×(年数−20年)」で、長く勤めた人ほど大きくなります
- 勤務先へ「退職所得の受給に関する申告書」を出せば正しい税額が源泉徴収され、原則確定申告は不要です
- 2026年1月1日以後に受け取るiDeCo一時金は、先に受け取ってから退職金までの間隔が「前年以前9年内」で重複判定されるため、フル控除には10年以上の間隔が目安になります
退職金やiDeCoの金額が大きいほど、受け取り方や順番の違いで手取りに差が出ます。気になる点があれば、勤務先・金融機関や税務署・税理士に自分のケースを確認しながら、早めに受け取り方を計画しておくと安心です。
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