副業の確定申告と「20万円ルール」入門|会社員が見落とす住民税の落とし穴
※ 2026年8月時点の情報です
「副業の利益が年20万円を超えなければ確定申告はいらない」副業を始めた会社員なら、一度は聞いたことがあるかもしれません。これは間違いではありませんが、「税金の手続きが何もいらない」という意味ではない点に注意が必要です。
いわゆる「20万円ルール」は所得税の確定申告についての話で、住民税には当てはまりません。副業の所得が20万円以下で所得税の確定申告をしない場合でも、住民税の申告は別途必要です。ここを見落とすと、あとから市区町村への問い合わせや、納め忘れによる負担につながることがあります。
この記事では、20万円ルールの正しい意味と、会社員が見落としやすい住民税の申告を整理します。副業に取り組む人は年々増えており、パーソル総合研究所の調査(2025年)では、正社員の副業実施率が調査開始以来最高の11.0%に達しました。副収入が身近になったいま、税金のルールも合わせて押さえておきましょう。
1. 副業の税金は「所得税」と「住民税」の2つ
副業の収入にかかる税金を考えるとき、まず押さえておきたいのは、税金が「所得税」と「住民税」の2つに分かれているという点です。この2つは別々の制度で、申告のルールも異なります。
- 所得税:国に納める税金。1年間の所得に対してかかり、原則として翌年の2月16日〜3月15日に確定申告して精算します
- 住民税:お住まいの市区町村・都道府県に納める税金。前年の所得に対してかかり、会社員の場合は毎月の給与から天引き(特別徴収)されるのが基本です
「20万円を超えなければ申告不要」というルールは、このうち所得税の確定申告についてのものです。住民税には同じ特例がありません。まずは「所得税の話」と「住民税の話」を分けて考えることが、副業の税金でつまずかないための第一歩です。
2. 所得税の「20万円ルール」を正しく理解する
会社員(給与を1か所から受けていて、勤務先で年末調整を受けている人)の場合、給与所得・退職所得以外の所得の合計額が年間20万円を超えると所得税の確定申告が必要になります。これが「20万円ルール」の中身です。裏を返せば、副業の所得が20万円以下なら、所得税の確定申告は原則不要です。
ただし、この「20万円」の判定でつまずきやすいポイントが2つあります。
「20万円」は売上ではなく所得で判定する
20万円は、売上などの「収入」ではなく「所得」で判定します。所得とは、収入からその収入を得るためにかかった必要経費を差し引いた金額です。
たとえばフリマアプリでの販売やネットオークションなどで得た副収入は、原則として「雑所得」に区分されます。仮に売上が30万円あっても、仕入れや送料・手数料などの経費が12万円かかっていれば、所得は18万円です。この場合は20万円以下なので、所得税の確定申告は不要という判定になります。売上だけを見て「20万円を超えたから申告が必要」と早合点しないようにしましょう。
なお、日常の買い物に伴って貯まるポイント還元は、通常の商取引における値引きと同様に扱われ、原則として確定申告の対象にはなりません。ポイントを効率よく貯めたい場合は、副業とは別に、自分の生活圏に合った経済圏を選ぶのが近道です。
副業がアルバイト(給与所得)のときは判定が変わる
副業がアルバイトやパートで、そこから給与を受け取っている場合は、判定の仕方が変わります。2か所以上から給与を受けている人は、年末調整されなかった従たる給与の収入金額と、給与所得・退職所得以外の所得の合計額が20万円を超えると確定申告が必要です。
この場合、副業のアルバイト分は「所得(収入−経費)」ではなく給与の「収入金額」で見る点に注意してください。自分の副業が「雑所得タイプ(フリマ・オークション等)」なのか「給与所得タイプ(アルバイト等)」なのかで、20万円の数え方が違ってきます。
3. 会社員が見落とす住民税の落とし穴
ここまでは所得税の話でした。会社員が見落としやすいのが、住民税の申告です。
所得税の「20万円以下なら確定申告は不要」という特例は、あくまで所得税だけのものです。住民税には、この特例が用意されていません。市区町村への住民税の申告は地方税法第317条の2で定められた義務で、副業の所得が20万円以下であっても対象になります。
つまり、副業の所得が20万円以下で所得税の確定申告をしない場合は、代わりにお住まいの市区町村へ住民税の申告をする必要があります。所得税の確定申告をしていないと、市区町村は副業の所得を把握できず、住民税を正しく計算できないためです。
一方で、所得税の確定申告をした場合は、その内容が市区町村へ共有され、住民税の申告書も提出されたものとみなされます(地方税法第317条の3)。この「みなし申告」があるため、確定申告をした人は別途住民税の申告をする必要はありません。医療費控除やふるさと納税(ワンストップ特例を使わない場合)などで確定申告をするなら、その1回の申告が所得税と住民税の両方を兼ねることになります。
整理すると、副業の所得と手続きの関係は次のようになります。
- 副業の所得が20万円を超える:所得税の確定申告が必要。住民税は確定申告の内容が自動で反映される
- 副業の所得が20万円以下:所得税の確定申告は不要。ただし住民税の申告は必要(副業がアルバイトなどの給与所得で、副業先から市区町村へ給与支払報告書が提出される場合は、市区町村が所得を把握できるため住民税の申告が不要になることがあります)
4. 自分は申告が必要?判定の流れ
自分がどの手続きをすべきかは、次の順番で確認すると整理しやすくなります。あくまで一般的な会社員(給与1か所・年末調整あり)を前提とした流れです。
- 副業の所得(収入−必要経費)を1年分計算する
- 所得が20万円を超えるなら、所得税の確定申告をする(住民税は別途申告しなくてよい)
- 所得が20万円以下なら、所得税の確定申告は不要。ただし、お住まいの市区町村へ住民税の申告をする
- 医療費控除やふるさと納税などで確定申告をする場合は、その確定申告が住民税の申告も兼ねる
副業がアルバイトなどの給与所得にあたる場合や、複数の副業を掛け持ちしている場合は判定が複雑になります。判断に迷うときは、確定申告をしておけば住民税の申告も兼ねられるため、確定申告を選ぶほうが手続きの抜け漏れを防ぎやすくなります。
5. 申告で損しないための注意点
副業の税金でつまずかないために、事前に知っておきたいポイントを整理します。
① 収入と経費の記録をつけておく
20万円の判定も、確定申告での所得の計算も、「収入−経費」がベースになります。売上の入金だけでなく、仕入れ・送料・手数料・通信費など、副業のためにかかった支出の領収書やレシートを残しておきましょう。記録があるほど経費を正しく差し引け、結果として申告が必要かどうかの判定も正確になります。
② 住民税の納付方法で会社に知られにくくする
副業を会社に知られたくない場合、住民税の納付方法を工夫する方法があります。確定申告書の第二表「住民税・事業税に関する事項」で、給与・公的年金等以外の所得にかかる住民税の徴収方法を「自分で納付」(普通徴収)に選択すれば、副業分の住民税が勤務先の給与天引きに合算されなくなります。
ただし、副業がアルバイトなどの給与所得の場合は普通徴収を選べないことがあり、自治体によって取り扱いが異なる場合もあります。会社に知られたくないという理由だけで判断せず、まずは就業規則で副業が認められているかを確認し、届出制なら正規の手続きを取るのが安全です。
③ 申告を忘れると加算税・延滞税がかかる
確定申告が必要なのに期限(原則3月15日)までに申告しなかったり、期限後に申告したりすると、本来の税金に加えて無申告加算税や延滞税が課されることがあります。「少額だから大丈夫」と放置せず、必要な場合は期限内に申告しましょう。
なお、副業で課税対象の所得が増えると、住民税の所得割額も増えます。ふるさと納税で自己負担2,000円のまま寄附できる上限額(控除の特例分は住民税所得割額の2割が上限)は、この所得割額に連動するため、所得が増えると上限も上がります。副収入が増えてきたら、返礼品を受け取りつつ税負担を最適化する選択肢も検討してみてください。
6. よくある質問
副業の利益が20万円以下なら、税金の手続きは何もいらない?
20万円は「売上」で見るのですか、それとも「利益」で見るのですか?
確定申告をすれば、住民税の申告は別にしなくていい?
確定申告を忘れていたことに気づいたら、どうすればいい?
7. まとめ
副業の税金は、「所得税」と「住民税」を分けて考えると整理しやすくなります。この記事のポイントを振り返ります。
- 「20万円を超えなければ申告不要」は所得税の確定申告についてのルール。住民税には当てはまらない
- 20万円は売上ではなく所得(収入−経費)で判定する。副業がアルバイトのときは数え方が変わる
- 副業の所得が20万円以下でも、住民税の申告は必要。所得税の確定申告をした場合は住民税の申告を兼ねる
- 収入と経費を記録し、必要なときは期限内に申告する。無申告のままだと加算税・延滞税がかかることがある
副業で得た収入は、使い切らずに一部を将来のために回すと、家計の安定につながります。少額から始められるクレカ積立の仕組みも合わせて確認してみてください。
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